訪問看護の利用に迷うとき、活用してください。
医療関係者や介護福祉関係者の皆様にも、訪問看護の役割と機能について知っていただき、住み慣れた地域で障がいや病気があっても暮らし続けたいと願う方々を共に支援していきたいと思っています。
訪問看護はどんなことをしてくれますか?
主治医と密に連携し、心身の状態に応じて以下のような看護を行います。身体的・精神的な看護はもとより、入退院(入所・退所)についてのご相談、必要に応じた在宅ケアサービスの紹介、関連機関との連携などにより、利用者の希望に沿った療養生活を叶えるための様々な支援や調整を行います。
入院を回避するためのケアができます。
入院という出来事は、高齢者にとって非日常です。特に、慢性疾患を抱え、適応力が低下したり、認知症のある高齢者にとって、急性期医療のシステムや病院の環境は、馴染みにくいものであり、場合によっては、安静によるADL の低下や認知症の進行などを招きます。
入院が本人や家族にどのような影響を及ぼすのかを考慮し、可能な限り自宅で本人らしく健康的に暮らし続けられるように、「何か変だな」と些細な気づきでも、かかりつけ医や訪問看護師等に相談し、多職種で連携しましょう。そして、再発等入院につながるリスクを生活の中から取り除き、療養環境、排泄、呼吸、動作、食事、睡眠を整え、健康状態を維持することに重点をおきましょう。
- 医学的視点に基づいた判断と予後予測が可能です!
- 合併症の予防や病状の悪化を防止することができます!
- 病状の不安定な方にも安全なケアや支援が提供できます!
- 医学的根拠に基づいた介護予防や自立支援が実施できます!
- 在宅生活における介護指導や環境整備を支援できます!
- 在宅での看取りを支援します!
- 在宅で医療行為が実施できます!
1.医学的視点に基づいた判断と予後予測が可能です!
訪問時の定期的な病状観察により、健康管理と共に病状変化への対応が速やかにできます。
常に主治医と連携をとっているので、受診などのタイミングの判断が適切にでき、重度化を防ぐことができます。
◎病気や障害を持って生活する利用者や介護者への精神的サポート(医療的 側面による課題や不安を踏まえた)ができます。
2.合併症の予防や病状の悪化を防止することができます!
◎低栄養や寝たきりの利用者に対して、褥瘡や肺炎等の予防・早期発見・対応ができます。
◎糖尿病で治療食や栄養管理の必要な利用者への栄養指導により、腎不全・脳血管疾患・失明等の合併症の予防ができます。
◎嚥下に問題のある利用者への食事形態の工夫や嚥下訓練により、肺炎等の合併症予防ができます。
◎慢性呼吸器疾患の利用者への呼吸訓練や生活指導により、呼吸機能低下や肺炎等の予防ができます。
◎精神疾患や認知症等により薬が正しく服用できない利用者に対して服薬管理を行うことで、病気の悪化を予防し、病状の安定が得られます。
◎難病や進行性疾患の利用者に対して病状の進行の予測ができるので、変化を踏まえた早めの対応が可能です。
訪問看護提供事業所によって、体制や専門性に特徴があります。訪問看護ご利用の際に、管理者にご相談下さい。
3.病状の不安定な方にも安全なケアや支援が提供できます!
◎利用者の全身状態変化に応じて、安全にケアを提供できます。
→心不全や呼吸器疾患の利用者入浴介助等
◎麻痺や病気からおこる利用者の 身体状況に対して、個別性応じた福祉用具選定・セッティングを一緒に考えることができます。
4.医学的根拠に基づいた介護予防や自立支援が実施できます!
◎健康や日常生活機能を取り戻せる可能性の判断と 、自立するための支援をします。
→食事や呼吸、動作、排泄の見直し、自宅での入浴の仕方、ポータブルトイレへの移乗、外出方法の工夫、その他
◎リハビ テーション導入の提案と共に、PT・OT・STの評価をもとにリハビリテーションを継続的に実施できます。
◎福祉用具導入の判断・利効果見極め評価ができます。
5.在宅生活における介護指導や環境整備を支援できます!
◎入院中に医療機関で行った療養指導、生活を在宅で継続できます。
◎家族の健康状態にも配慮し、本人を取り巻く生活全体を考えた支援ができます。
◎初めての介護を担う家族等へ、介護が上手くできるようになるための指導や支援 ができ、介護負担軽減につながり、結果、不安の軽減も図れます。
◎認知症の利用者家族が病気を理解し適切に介護できるよう、 指導・支援するこ とで、安定したケアチーム体制が構築できます。
◎24時間連絡体制を届け出ている訪問看護ステーションでは、夜間や休日も電 話での相談や必要に応じた訪問看護を実施でき、 利用者や介護者をサポートし ます。
◎看護の視点で利用者の状況変化を把握し、ケアマネジャーへ報告できるので、サービス見直しや再アセメントなどの見通しがしやすくなります。
6.在宅での看取りを支援します!
◎利用者や家族が望む生き方を全うできるように支援します。
◎とかく医療ニーズが高くなりがちな終末期において、医療を生活になじむ方法に変えるために看護の専門性を発揮します。
→予後予測に基づいて、段階的に利用者や家族に看取りの準備教育をします。
→苦痛を最小限にするケアを提供します。(痛みの緩和・便秘対応・褥瘡予防・経口摂取困難への対応・安楽な介護方法等)
→家族への精神的支援やグリーフケア(看取り~看取り後のケア)
◎主治医と密に連絡調整を行い、痛みなどの症状緩和や麻薬等の調整、必要時の医療処置への対応が速やかにできます。
◎24時間連絡体制を届け出ている訪問看護ステーションでは、緊急時の電話相談と必要に応じた訪問看護を実施できるので、利用者や介護者の安心につながります。
7.在宅で医療行為が実施できます!
◎退院直後に利用することで、退院後も継続する医療を、家での生活になじむ方法に切り替えたうえで本人や介護者に指導でき、手技の確認等により、安全に生活するための療養環境を整備することができます。
- 人工肛門、膀胱留置カテーテル、膀胱瘻、腎瘻
- 経管栄養、胃瘻
- 褥瘡処置、創処置、軟膏処置
- 点滴、注射、中心静脈栄養(IVH)
- 気管カニューレ、吸引、吸入、人工呼吸器、在宅酸素
- インスリン自己注射
- 腹膜透析(CAPD) 等
◎主治医や医療機関との連携により、異常時や緊急時の対応が可能です。
訪問看護ステーション選択のポイント
訪問看護ステーションごとに特徴がありますので、事業所を選ぶ際には、以下の点を参考にして、あらかじめご相談の上、ご利用ください。
訪問エリア
利用者宅と訪問看護ステーションの距離
空き状況
時間や曜日の限定がある場合には要相談
24時間連絡体制(緊急時訪問看護体制)の有無
病状が不安定、医療機器の管理、介護不安の場合、ターミナルケア、など
営業日、時間
営業時間や、土・日・祝日の稼動状況、など
活動の特徴や専門性
得意なケア(緩和ケア、認知症ケア、等)
専門的看護(精神看護、小児看護、等)
専門看護師・認定看護師等の在籍
PT・OT・STの在籍
地域との連携状況
連携の取りやすさ
意思疎通、連絡がつく、確実な対応、など
訪問看護の費用について
- 各種保険(医療保険、介護保険、公費負担医療など)が使えます。
- 利用する保険によって、利用料金や自己負担金は異なります。
- 緊急の場合の連絡対応など、特別な対応を契約される場合には料金体系が変わります。
- 身体障害者の医療受給者や特定疾患の医療受給者など、公費対象の方の場合は利用金額が免除もしくは減額されます(お住まいの市町村によって違いがあります)。
訪問看護を利用するには
訪問看護は、主治医から「訪問看護指示書」「特別訪問看護指示書」の交付を受けて実施します。
要介護・要支援の認定を受けた方は、本来、介護保険が優先ですが、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)や、病状の悪化等により特別訪問看護指示期間にある方、精神科訪問看護が必要な方(認知症はのぞく)は、医療保険で訪問看護が提供されます。
また、医療保険の訪問看護は、基本的に利用回数は週3日までですが、厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)や気管カニューレ等の特別な管理を必要とする方(別表第8)、病状の悪化等により特別訪問看護指示書期間にある方は、週4日以上の利用ができます。
◆訪問看護の実施に当たっては、慎重な状況判断が要求されることを踏まえ、主治医との密接な連携を図ることが重要です。適切な訪問看護を提供するために、定期的に「訪問看護計画書」および「訪問看護報告書」を主治医に提出します。
訪問看護指示書の種類
- 訪問看護指示書
通常使用される訪問看護指示書で、月1回主治医が『300点』を算定できます。 - 特別訪問看護指示書
患者の急性増悪などにより、頻回の訪問看護が必要になった場合に交付し、月1回主治医が『100点』を算定できます。
ただし、「気管カニューレを使用している状態にある者」「真皮を越える褥瘡の状態にある者」については、月2回まで交付できます。 - 在宅患者訪問点滴注射指示書
週3日以上の点滴注射を行う必要を認め、訪問看護ステーションに対して指示を行う場合に交付し、主治医が『60点』を算定でき、患者1人につき週1回(指示期間7日以内)に限り、月に何回でも交付できます。 - 精神訪問看護指示書
精神障害者社会復帰施設等において、同時に複数(8人まで)の患者に訪問看護を行う場合(訪問看護ステーションが訪問看護基本療養費(Ⅱ)を算定)に交付し、月1回主治医が『300点』を算定できます。
訪問看護に関連する診療報酬について
1.訪問看護指示料 300点
居宅で療養を行っている通院が困難な患者の主治医が診療に基づいて、訪問看護ステーションに対して訪問看護指示書を交付した場合に算定できます。算定は患者1人につき月1回に限られます。有効期間については主治医が6ヶ月以内の月日を記載しますが、患者の病状等に応じてその期間は変更できます。
2.特別訪問看護指示加算 100点
患者の主治医が診療に基づいて、病状の急性増悪や終末期などにより、一時的に週4回以上の頻回な訪問看護の必要性を認め、その旨を記載した特別訪問看護指示書を訪問看護ステーションに交付した場合に、上記の訪問看護指示料の加算点数として特別訪問看護指示加算を算定する事ができます。
この加算は月1回に限って算定できます。ただし、厚生労働大臣が定める者(「気管カニューレを使用している状態にある者」「真皮を越える褥瘡の状態にある者)については、月2回算定できます。
3.在宅患者訪問点滴注射管理指導料 60点
居宅で療養を行っている通院困難な患者の主治医が、診療に基づき、週3日以上の点滴注射を行う必要性を認め、訪問看護ステーションに在宅患者訪問点滴注射指示書(訪問看護・特別訪問看護指示書と共通様式)に指示期間(診療日から7日以内に限る)と指示内容を記載して指示を行った場合に算定できます。
1週間のうち、3日以上点滴注射を実施した場合に3日目に60点を、週1回にかぎり保険医療機関が算定します。
この場合、保険医療機関は点滴注射と併せて使用する薬剤・回路など必要十分な保険医療材料や衛生材料を供与する必要があり、薬剤以外の費用がこの指導料に含まれます。
4.在宅患者連携指導料 900点
訪問診療を実施している保険医療機関が患者の同意を得て訪問看護ステーションなどの医療関係職種間で文書により情報を共有し、その情報を踏まえて療養上必要な指導を行った場合に算定できます。情報共有は月2回以上文書など(電子メール、ファックスでも可)で行い、月1回に限り算定できます。ただし、特別の関係にある保険医療機関等の医療関係職種のみで診療情報を交換した場合は算定できません。
注:訪問看護指示書を出している訪問看護ステーションとの情報共有の場合は算定できません。
5.在宅患者緊急時等カンファレンス料 200点
訪問診療を実施している保険医療機関が在宅療養を行っている患者の状態の急変等に伴い、保険医の求めにより歯科医師等、薬剤師、訪問看護師等又は居宅介護支援専門員と共同で患家に赴きカンファレンスを行い、又は参加し、それらのものと共同で療養上必要な指導を行った場合に月2回に限り算定できます。
ただし、特別の関係にある保険医療機関等の医療関係職種等のみでカンファレンスを行った場合は算定できません。
注:患者・家族が希望する場合は患家以外の場所でも算定は可能です。
注:訪問看護指示書を出している訪問看護ステーションと2者でカンファレンスを行った場合も算定できます。
6.退院時共同指導料
入院中の患者が退院するに当たり、入院中の医療機関の保険医(看護師等)と退院後に在宅療養を担う医療機関の保険医(看護師等)及び訪問看護ステーションの看護師等が、共同して居宅における療養上必要な指導を行った場合、入院中1回に限り算定できます。
ただし、「厚生労働大臣が定める疾病等」の患者については入院中2回に限り算定できます。
※介護老人保健施設も同様
在宅療養支援診療所の場合 | それ以外の場合 | |
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退院時共同指導料 1 (紹介元の医療機関が算定) | 1,000点 | 600点 |
退院時共同指導料 2 (入院先の病院が算定) | 300点+加算(下記(1)又は(2)) (1)保険医同士の共同指導の場合300点加算 (2)退院後の保険医療機関の医師(看護師等)、歯科医師(歯科衛生士)、薬剤師、訪問看護師、介護支援専門員などの内、3者以上と共同指導の場合2,000点加算 | |
退院時共同指導加算 (訪問看護ステーションが算定) | 6,000円 |
7.在宅末期医療総合診療料
末期の悪性腫瘍の患者に対して、在宅療養支援診療所の医師などが、総合的な在宅医療計画を策定し、訪問診療または訪問看護を週4日以上(週1回以上の訪問診療を含めて週4回以上の訪問診療及び訪問看護)行った場合に、1週間を単位として在宅療養支援診療所が、在宅末期医療総合診療料(1日につき)を算定できるもので、院外処方箋を交付した場合は1,495点、院内処方の場合は1,685点を算定できます。
在宅末期医療総合診療料の算定要件となっている訪問看護は、在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院と連携を有する訪問看護ステーションと共同で行うことが認められていますが、訪問看護に要する費用は在宅末期医療総合診療料に含まれているため、訪問看護ステーションから訪問看護療養費を請求することはできません。
したがって、在宅療養支援診療所が一括して請求し、訪問看護に要した費用は在宅療養支援診療所又は在宅療養支援病院から支払いを受けることとなります。
8.在宅寝たきり患者処置指導管理料 1,050点
居宅において療養を行う寝たきり又はこれに準ずる状態の患者が、居宅において患者自ら、又は家族等が処置を行うにあたり、医師が居宅を訪問して処置に関する指導管理を行った場合に、1月に1回を限度として算定するものです。
これらの処置に必要なカテーテル等の費用は、特定保険医療材料料として医療機関が別途算定できるようになっており、またそれ以外の衛生材料、消毒液、カテーテル等は当該点数に含まれているため、これらの処置に要する衛生材料等は医療機関が提供することになっています。